『身近な分子たち』

                  サイエンスシアターシリーズ 原子・分子編2
                        板倉聖宣・吉村七郎著  仮説社
非常に楽しい本が出た。分子・原子に関する基本的な話をこんなにわかりやす
く、しかも楽しく学べるように書いた本はない。この本では、空気中に存在する
分子や原子、植物体に存在する分子について模型図を中心に展開している。
 この本の特徴は、次々と出てくる分子(原子)の図に、読者が直接色塗りをして
いくことにある。分子の色など最初からつけておけばいいではないかと思われる
が、色塗りもけっこう楽しいものだ。それに、色塗りの合間に分子についてのイ
メージが徐々
に広がっていく効果も大きい。この本のもう一つの特徴は、簡潔な問いかけ言葉
が主軸になって話が展開されていることにある。このような手法は話の筋を見事
に引き立てている。 
第1幕は、空気中に基本的にある窒素、酸素、水、二酸化炭素などの分子が出
てきて、空気の概念をまとめている。そのあとに、「脱酸素剤=エージレスでの
実験」の話が入る。もし、自分で試したければ家庭で簡単に出来る実験である。
このおかげで、空気中の分子の話がぐっと親しみやすくなる。分子、原子も私た
ちの身近な存在であることがわかる。第2幕は「空気を汚す気体」で、フロンや
ダイオキシンまで出てくる。第3幕は「くさい気体・おもしろい気体」で、アン
モニアからメタン・エタン・プロパン・笑気まで出てくる。ここでかなり長い
〈いろいろな気体の発明発見物語〉が入る。気体を発見していく科学者達の発明
と失敗のドラマが語られている。第4幕は「植物と食物のもと」で、長大なセル
ローズや紙の話、植物の成長の話、砂糖やサッカリンの話と続いてアルコールの
話で終わっている。     
                                 2001,8  2000円

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